寡婦年金と消滅時効

★寡婦年金と消滅時効

 寡婦年金の請求権は消滅時効にかからない。ではなぜであろうか。まず寡婦年金の法的性格について検討する。

 寡婦年金は夫が国民年金をかけていたにもかかわらず死亡した場合に掛け捨てを防止する趣旨で妻に60歳から5年間支給するものである。

とすると寡婦年金は妻たる地位(10年以上)に基づいて生じる一種の人格権である。

民法167条では債権または所有権以外の財産権について消滅時効を定め、財産権以外の相続回復請求権(民法884条)や遺留分減殺請求権(民法1042条)など特則という形で定めている。

そこで国年102条1項「年金を受ける権利」に含まれないか。

ここで「年金給付を受ける権利」とは年金の受給権のことを指し受給権を発生させる請求権は含まれないとも考えることもできる。

そしてこの受給権は月々発生する具体的な金銭債権(支分権)のことを指し,支分権を生じさせる基本権は妻たる地位に基づいていることから含まれないと考えることもできる。

この考えは民法の国年102条1項を定めた趣旨を原則通り人格権の一種である寡婦年金には消滅時効は生じないが、そこから生じる具体的な金銭債権たる支分権には時効を適用すると考えている。

しかし素直に考えれば寡婦年金が妻たる地位に基づく人格権の一種ならば支給要件が満たされれば受給権は当然に生じ請求により寡婦年金を生みだす基本権と月々生じる支分権に転化すると考えるべきであろう。

とするのならば寡婦年金の支給要件を満たした場合には「年金給付を受ける権利」に含まれ消滅時効の適用はあると考える方が論理的である。

ただし会計法31条の適用はないことから消滅時効の援用を必要とし、この場面で援用はしない運用がなされていると見るのが妥当といえないだろうか。

 

ここに書かれたことはあくまでも私見であり、現実にとられるかはわかりません。