障害年金と憲法25条 Ⅱ

前回憲法25条は最後のセーフティネットである生活保護法は義務付けるが、それ以上の生活保障である障害年金は義務付けずいかなる制度設計をするかは立法裁量の問題であるというお話をした。

そこで憲法と障害年金の関係を知るために憲法とは何なのかを考えてみる。

形式的に考えるならば憲法は国家の根本法である。

実質的に考えるのならば日本国憲法は西洋近代市民革命の流れをくみ一般の国民が強大な権力を持つ特権階級足る国王や貴族から血と汗と涙で権利(当初は税制)を獲得したものである。それゆえに憲法は国民と国家との契約(社会契約説)と考えられ国民の権利を守るために憲法によって国家に権限を授権したのである。それゆえ憲法は国家の最高法規とされ憲法に反する一切の法令や国家行為は効力を有せず(98条)公務員は憲法尊重擁護義務を負うとしたのである(99条)。

そうすることにより国家権力を制限し、国民の自由を守ろうとしているのである。

ここで注意してほしいのは国家に対して守ろうとしている国民の自由とは国家が国民の支持を受けている多数派であることから多数派に対して侵害される少数派のことを言っているのである。

すなわち国民の自由(基本的人権の尊重)を守るためには国民自身が政治を行い(国民主権)、有事になれば国民の権利は必ず制限されることから平和を維持しなければならない(平和主義)を貫いている。

そして統治機構は立法・行政・司法と国家権力を区分し、それぞれに立法権・行政権・司法権を与え、抑制と均衡により県ry区の暴走を止めようとしている(権力分立)。

また選挙により国民の代表を選び(43条1項)、国民の代表で構成される国会が内閣総理大臣を指名し(67条1項)、その内閣が最高裁判所裁判官を指名任命(79条)する。そして衆議院の任期は4年で重大な民意を問う問題が生じたときには解散により現在の民意を国政に反映させ、参議院は任期が6年と安定した民意を国政に反映させようとする。また司法は政治的影響力が及んではならないので身分保障が十分になされ最高裁にのみ国民審査による罷免が用意されている(79条3項)。国民審査は予算の無駄ということがいわれることがあるが裁判官は裁判の内容ではやめさせることができず重大な問題が起こったときの最後の安全弁としての役割を担っている。それゆえ通常は使えなくてもよいのです。また衆議院選挙と同時に行われることから合理性もある。

このように憲法は徹底的に民意を反映するように設計されている。その根本は選挙である。

そして憲法改正(96条)は憲法が国民の自由を守ることを最も大切なものとしているからこそ各議院の総議員の3分の2で発議をし国民の過半数の賛成を必要とするという思い手続きを科したのは少数派の自由を守るために多数派だけで帰ることができないようにしすべての国民に納得のいく形で憲法改正を行うことを要求したのである。

これが日本国憲法である。

ということは憲法が広く立法裁量を認めた生活保障の手段は国民自身が考え制定するべき事柄であるとしたのである。したがって障害年金は憲法25条が国民自身の判断にまかせた制度と考えることができる。