[問題] 本件係争期間につき請求人に脱退手当金が支給された事実があるか。
[論理] 脱退手当金の支給の有無が争われている場合はこれを支給したと主張する保険者の側で受給者の作成した請求書や領収書によって証明するのが本筋である。
しかし脱退手当金の支給の有無が問題となるのはすでに長期間が経過しているのが一般的で、請求書や領収書は保存期間が過ぎ廃棄され、これに基づいた支給記録や被保険者記録のみ残されているのが通例である。
そこで保険者が法の定めに基づいて作成管理する記録は公募として事実上の推定力があり、脱退手当金の支給事務が適正に行われたかを疑わせる事実の提示があるとか、記録の内容相互に矛盾があるなどの事情がない限り事実上の推定力は覆されないというべきである。
本件係争期間にかかる脱退手当金の支給は請求人以外の者の請求等によるものとみるのが相当であり請求人にその責任があるとの特段の事情もない。
したがって本件係争期間につき請求人に脱退手当金が支給された事実はない。
[解説] 脱退手当金が支給されていた時期は女性が雇用労働市場から退出した後再度戻ることはないと考えられた時代でした。
しかし時代の変化とともに再度雇用され、脱退手当金の支給の有無が争われる事例が多くみられるようになりました。