重婚内縁

★不服申立て再審査請求社会保険審査会で重婚内縁にある内縁の妻に遺族厚生年金の支給が認められるかを争った事例。

[問題] 亡Aの死亡当時同人と利害関係人との婚姻関係が実を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化しているといえるか。

 

[論理] 遺族厚生年金はその者の死亡当時そのものによって生計を維持した配偶者に支給される。

 ここで「配偶者」には婚姻はしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものを含む。

 そして重婚的内縁関係が存在する場合は戸籍上の配偶者と死亡したものとの間の婚姻関係が実体を全く失ったものとなっていることが必要である。

 この「実体を失ったもの」とはその婚姻関係が実質を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化している場合をいう。

 さらに婚姻関係が形骸化し、かつ、その状態が固定化したとは、事実上婚姻関係を解消することを合意した上、長期間別居し、婚姻関係を維持継続しようとの意思を放棄したと認められる等の事実があることにより事実上の離婚状態があったといえる場合でなければならない。

 この事実上の離婚状態とは双方の積極的な意思が合致して事実上の離婚状態を作り出しているということでなければならない。

 本件において、亡Aが所在不明となったのは公金を着服して多額の借金があったことが原因である。

 また、亡Aと利害関係人との間には夫婦の協力扶助関係が維持されていた。

 さらに、亡Aと利害関係人の双方の間に婚姻関係を継続維持しようとする意思を放棄したと認められる事実もない。

 したがって、亡Aの死亡当時婚姻関係が形骸化し、かつ、その状態が固定化したとは言えない。

[解説] 本件では重婚的内縁関係において内縁の配偶者が遺族厚生年金を受給するためには戸籍上の婚姻関係が事実上の離婚状態となっていることを必要とするとしたものである。