不服申立ての問題点

★不服申立ての問題点

審査請求・再審査請求をする際には請求書に請求の趣旨と理由を記載します。この請求の趣旨は訴訟でいうと訴訟物のことで審判の対象たる権利法律関係のことを言います。これに対し請求の趣旨とは訴訟でいうと事実上の主張のことを言います。すなわち法律には法律効果と法律要件が定められており、法律要件に当てはまる事実があって初めて法律効果が生じます。そして事実に争いがある場合は証拠により認定します。

障害年金請求については初診日要件・保険料納付要件・障害等級該当性の要件があります。当然請求の趣旨は2級の障害年金の支給を求めるという形になります。ここで問題になるのは請求の理由で事実の主張を行うのはよいのであるが証拠方法が限定されている点である。くわしくは別項で論じているが行政手続きは専門的技術的機関が迅速に国民の権利を保護するためには訴訟手続きのような証拠調べはなじまず、正確性の高い証拠による証明が必要とされるのである。それゆえ多くは医証などに限定され一部初診日証明などに第三者証明などの実質的証明が導入されている。ただし行政手続きでは職権主義が採用され立証の負担の軽減がなされている。

では興味深い例をあげてみよう。私が3回ほど聞いたに過ぎない事例である。

難治性てんかんの障害者の事例でてんかんの場合2級の判断基準の一つとして意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作は年に2回ある場合に判断されます。年に2回なら形式的に判断でき非常にわかりやすい。ところが障害者は初診日から障害認定日までに1回しか発作を起こさず障害認定日後連続して発作が起きるのである。これは判断時が障害認定日なので形式的にみれば2級には該当しません。しかしその後何度も発作は発生しています。実質的に考えれば障害認定日に十分2級に該当している可能性はあります。とするならば不服申し立てから訴訟へと争う理由は十分あります。

ここで確認するのは国民年金の被保険者であるときに初診日があった場合は2級以上でなければ障害年金は支給されないということです。

そして請求の趣旨は障害認定日における2級の障害年金の支給を求めるとなります。

次に請求の理由は形式的には障害認定日には等級外の状態であるが実質的にみれば障害等級に該当しているになります。その証明として障害認定日後の発作の発生状況と障害認定日の医師の2級該当性の意見書を添付する必要がある。

ただし行政手続きが形式的判断を重視するならばこの裁定は不服申立ての段階では覆らないだろう。終局的強制的解決を図る司法手続きの判断を期待する必要がある。なぜならば司法手続きでは証拠方法の無制限といって診療録に基づく診断書は可ならづしも必要ではなく障害認定日に2級に該当する事実を立証すればよいからである。このように不服申し立ては決定された判断に際して自己の主張に足りない部分に対して審理されます。それが級の請求に対して等級外とされる場合です。

これは多くの国民の権利を守るための少数者の犠牲となります。

少数者の犠牲に対して司法が動くのは憲法上当然のことと考えます。すなわち司法権は全国民を敵に回してでもたった一人の人権を守るために動く機関です。この点政治(最大多数の最大幸福)とは異なります。