保険者算定

【問題】 被保険者の報酬月額が定時算定によって算定した額が著しく不当な時は保険者算定を行う(厚年24①)。

 36年通知では「著しく不当なとき」を、4,5,6月の3ヶ月間において3月分以外の遅配分をけ、または、さかのぼった昇給によって数月分の差額を一括して受ける等、通常受けるべき報酬以外の報酬を当月期間において受けた場合と定める。

 では「等」はそれ以外のものを含む趣旨であるのか。

 

【論理】 多くの企業において常用雇用者の給与額が毎年度4月から引き上げられる慣行があったことに着目し、当該引き上げ後の4月から6月までの報酬総額を基準にしてその年の標準報酬月額対象期間における保険料の賦課基準にすることが当該期間に現に被保険者が事業主から受け取ると予想される毎月の報酬総額に最も近似していると想定しているにすぎないと解されるから、定時算定によって算定された額が標準報酬対象期間に当該被保険者が事業主から受け取ると予想される月平均の報酬総額と近似せず、両者が乖離する結果が生じることが明らかで、懊悩負担の考えにもとずく負担の公平が著しく損なわれる蓋然性が高いと認められる場合には、この乖離を解消するために保険者算定をすることを認めた趣旨である。

 厚年24①は「21①・・・・・の規定によって算定した額が著しく不当であるときは」と規定するのみでどのような場合にいちじるしく不当であるか、すなわち懊悩負担の考えにもとずく負担の公平が著しく損なわれる蓋然性が高いと判断すべきかについては社会保険庁長官が諸般の事情を考慮して、裁量により判断することができ、社会保険庁長官に付与された裁量権は広範なものと解するのが相当であるが、厚年保険料に憲法84条の規定の趣旨が及ぶと解すべきところ、その裁量が社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱するものと判断される場合には例外的にその妥当性を否定するものである。

 そこで考えてみるにどのような場合に「著しく不当である」かなにも具体的に規定していないところを考慮すると、36年通知で「4,5,6月の3ヶ月間において3月分以前の給料の遅配分を受けた場合」、「さかのぼった昇給によって数月分の差額を一括して受ける場合」「等」としていることからこの二つの倍に比肩すべき事情があるときまで「著しく不当である」ことを否定する趣旨ではない。