障害等級と労働について

年金事務所での相談において「働ける人は障害年金なんて出ませんよ」という返答を聞いたことはありませんか。働いているというだけで障害等級が低くなるこんな話を聞いたことはありませんか。私は仕事柄聞くことがあります。ではこの言葉本当なのでしょうか。

まず障害等級は国民年金法・厚生年金保険法の委任を受けて国民年金施行例別表・厚生年金保険法施行令別表で規定されている。

 憲法では実質意味の立法は国会にのみ認められているが専門的技術的事項については目的と基準を定めることにより委任することが認められている。

 もちろん目的は合理的な障害等級の定立であり基準は年金支給するための労働能力の喪失低下の具体化である。

 そしてそこで簡単に表現すれば3級が障害によって労働が著しく困難となったこと、2級が障害によって日常生活が著しく困難となったこと、1級が障害により日常生活ができない状態になったことである。

 この障害等級の定義によれば障害年金3級は部分的に失われた労働能力を補うため支給され、1級2級は労働能力の喪失に対する生活保障ということになる。形式的に考えれば働いている人は障害年金はもらえないといえそうです。しかし、そうは簡単ではありません。

 国は障害者雇用促進法を制定して事業主から雇用率を下回る場合は障害者雇用納付金を徴収し、上回る場合は障害者雇用調整金を支給する。

 労働は生活のためではなく社会との接点となり労働を通じて人格形成を図る重要な役割を果たしている。

 とするならば障害者雇用促進法は障害者の雇用の促進を図るために躊躇なく働ける環境を作っているといえる。ならば働いていれば障害年金は出ないと解釈されるべきではなく働いても健常者と比べて多くの苦労をしているわけであるから支給されるべきであろう。

 そして障害認定基準は基準に当てはまっても労働していたのならば障害等級を低く認定するという例外規定はない。ないのにもかかわらず低く認定するのは法的安定性を害する。まして部分的にではあるが「労働に従事していることを持って直ちに日常生活能力が向上したものととらえず」との記載もみられる。

 とするならば障害認定基準は診断書を中心にして客観的に当てはめるべきで恣意的な判断は許されないというべきであろう。

 たとえば目の不自由な方、両足を失った方は1級であるが働いている方は大勢います。この方たちは働いていることのみで障害等級が下げられるのでしょうか。

 この方たちは明確に1級です。しかも障害認定基準に当てはめて1級なのです。

 ならば他の障害の方たちも障害認定基準に当てはめて1級ならば労働に従事しようと1級でしょう。この方たちは健常者に比較できないほどの苦労をしているからです。

 障害年金は老齢年金が支給される前に労働能力が喪失した場合の生活保障である。しかし支給額は生活費には足りづ既存の財産や生活保護を併給しなければ生活は成り立ちません。

 とするならば苦労して生活のため人格形成のため働いている人から障害年金を奪うことはできないと思います。

 増して国民年金・厚生年金は強制加入の保険である。支給要件が満たされれば支給するのが当たり前である。

 したがって障害認定基準は客観的に判断すべきである。