証拠法則について

法律には法律効果と法律要件が定められており法律要件に当てはまる事実(これを要証事実という)があることにより法律効果が生じる。そして事実に争いのある場合は証拠による証明が必要となる。また事実が法律要件に直接当てはまらない場合は文理解釈・反対解釈・縮小解釈・拡大解釈・類推解釈などを法の趣旨から行い法律要件に当てはまるか否かを検討する。証拠は適式な証拠調べを経た証拠能力のある証拠による必要がある。この適式な証拠調べを行う必要があることが時間がかかるので行政手続き段階では相対的に誤りの入りにくい証拠に限定されているわけである。

そして証拠能力とは証拠となりうる資格のことでたとえば違法な行為によって集められた証拠はその資格を失う。あとは証明力の問題である。証明力とは要証事実の認定にどの程度役立つかをいう。この証拠により事実は認定される。

訴訟では事実の認定には裁判官に合理的な疑いを入れない程度の心証を必要とするが行政手続(裁定請求・不服申立て)の段階でも同程度の証明力を必要とするだろう。そして証明責任は法律効果を主張するものが要証事実の証明について負うことになる(法律要件分類説)。

ここで一つ事例を考えてみたい。まず①20歳前障害で3級相当である。当然障害基礎年金には3級はないので障害年金は支給されない。それに②20歳以後で2級相当の障害を持っているが支給要件を満たさない。実はこの時点では①と②の間に相当因果関係を認める方法は使うつもりはなかった。20歳前障害は障害基礎年金しか出ず、また所得制限がつくからだ。そこで何とか③別障害を基準障害として「初めて」2級の請求をすることにした。この場合「初めて2級」は基準障害と前発障害を併合して初めて2級以上になることが必要となる。とすると「初めて2級」を否定するためには①と②の間に相当因果関係を認めて否定する必要が出てくる。法律要件分類説を前提にすれば「初めて2級」を主張すれば労せずして20歳前の障害が認定されるのではないだろうか。機構の見解を聞いてみたいものである(実際に同様な事例にぶつかったときに年金事務所は①②で要件を満たさないことを理由に申請できないといっておきながら「初めて2級」の申請をする段階で20歳前の請求をしつこいくい言ってきました)。