社会的治癒(うつ病 脳性まひ)

[問題] 本件は健保の傷病手当金の支給に関する問題である。傷病手当金の法定支給期間は1年6ヵ月であるが当該傷病(うつ病 脳性まひ)と帰結受給傷病(うつ病 脳性まひ)が同一傷病である場合社会的治癒は認められるか。

[論理] 1 当該傷病と帰結受給傷病は同一傷病といえるか。

 まず医師によると治療は継続しており当該傷病は別傷病ではなく継続と考えている。

 また、帰結受給期間終了後は外来通院で精神療法と薬物治療を行っていた。

 したがって既決受給傷病と当該傷病は同一と考える。

2 社会的治癒は成立しないか。

 社会保険の運用上過去の傷病が治癒した後再び悪化した場合は再発とし過去の傷病とは別傷病と扱い、治癒が認められない場合は過去の傷病と同一傷病が継続しているものと扱われる。

 多くの精神障害については日常生活にあまり負担を与えない治療を続けて受けていれば、生体の機能が正常に保持され、悪化の可能性が予測されない状態を社会的治癒の状態という。

 そして薬物の持続的服薬が予防的服薬の範疇にあると認められ、健康保険の被保険者として健常者と変わりのない生活を送ってきた場合と判断できた場合は社会的治癒と認めてきた。

 本件において帰結受給傷病と当該傷病は定期的な通院と予防的な薬物治療により安定した状態が維持されていたと認められる。

 次に就労状況は従前の勤務を行うことができていたと認められる。

 したがって社会的治癒があったと認められる。

[解説] 健康保険法の傷病手当金の支給に社会的治癒を認めた事例である。

 ここで社会的治癒とは傷病が医学的な意味で治癒したとは言えないが、その症状が消滅して社会復帰が可能となり、かつ、治療投薬を要せず、外見上治癒したと見えるような状態がある程度継続することであり、保険給付上はこれを治癒に準じて扱う。

 成立要件は

①同一の傷病

②医学的な治癒とは言えないがその症状が消滅して社会復帰が可能となったこと

③外見上治癒したと見える状態がある程度の期間継続すること

 本件は子の要件に事実を当てはめた事例である。