49 強迫性障害(障害等級)

[問題] 障害認定日または裁定請求日における強迫性障害の障害の状態が障害等級に該当しないと認められるか。

[論理] 厚年令別表第一に障害等級3級の障害厚生年金の支給される状態が定められている。

 そしてより具体的な基準として厚生労働省から発出されたと見なされる障害認定基準がある。障害の認定及び給付の公平を期するための尺度としてこれに依拠するのが相当である。

 神経症はその症状が長期間継続し、一見重症なものであっても原則として、認定の対象とはならないとされているが、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または躁うつ病に準じて取り扱うとされている。

 精神病の病態を示しているものとは

①正しい疾病名は精神病に属する疾病の集合である精神病圏に属する疾病名であること

②疾病は精神病圏に属しておらず神経症圏に属しているが、その呈する臨床症状が憂鬱気分や幻覚・妄想といった「準じて取り扱う」とされた統合失調症や躁うつ病と共通する病態を持つもの

③統合失調症ないし躁うつ病と共通の臨床症状を呈し、それによる精神障害の程度が、精神医学における「精神病水準」にあること

④統合失調症ないし躁うつ病と共通の臨床症状に限らず、精神疾患が示す臨床症状を呈し、それによる精神障害の程度が「精神病水準」にあること

⑤単純にその臨床症状による精神障害が精神病によるそれと同一レベルにある

これらを考慮すべきである。

 障害認定日当時における請求人の障害の状態は、強迫観念を中核とし不眠・抑うつ気分・不安などがあり、統合失調症ないしは躁うつ病の病態を示していなかったと判断するのが相当である。

 裁定請求日当時の当該傷病による病態は、基本的に障害認定日と同様に、神経症の主要症状である妄想的強迫観念であり、統合失調症ナイス¥市は躁うつ病の病態が認められず、精神病の病態を呈していないとするのが相当である。

 したがって神経症圏の範疇である強迫性障害の症状が前景として認められ、統合失調症ないしは躁うつ病の病態を認めることはできないのであるからこれを認定対象とすることはできない。

[解説] 本件は強迫性障害(神経症)に障害年金は支給されるかが問題とされる。

 神経症は自己治癒可能性がありまず本人の努力で傷病を治させようと考えているのであろう。

 また、精神病に対する偏見が強いことからあえて神経症の病名をつけることがある。

 それゆえ精神病の病態を示している場合は統合失調症または躁うつ病に準じて取り扱うとする。