今回はてんかんで傷害等級が問題になった事例です。
この裁決例はてんかん発作の特殊性がよく出たものです。てんかんはその他の精神障害がない限り発作が起きなければ普通に暮らすことができます。それゆえに傷害等級を判断する際にいつの時点を基準にするのか、てんかん発作が起きたときか、普通に暮らしているときか、それとも全体を評価するのかです。
本件では月に数回強直性痙攣を起こし、これは発作時転倒し意識を失う発作です。
とすると障害認定基準ではAタイプ・Bタイプ双方の要件を満たし傷害等級1級が認定できるのではないかと言うことになります。しかし1級にはもう一つの要件である「常時の援助が必要なもの」がある。
裁決例では日常生活能力の判定・程度が特に問題なく、医師の結論部分が労働が制限を受ける程度としていることから3級程度と判断されている。
これに対し請求人は発作が起きていない状態で判断しているものとして批判している。
しかし全体を基準としてみればいつ発作が起きるかわからず意識障害、転倒を伴うものになれば場合によっては命の危険を伴うこともある。とするならば発作が起きることを前提とした対策が必要ということとなる。そして意識障害、転倒を伴うものならばすべてにおいて自分のみでは対処することはできず他者の援助が必要となる。
ならば「常時の援助が必要なもの」に当たるのではないか。裁決例の判断には疑問が残る。