予備的請求却下(強皮症)

[問題] 本件では初めて2級の請求がなされているが前発障害が2級に該当していることから請求が却下されている。

 しかし請求者本人の気持ちとしては、明示的には初めて2級の請求がなされている場合であっても、仮にそれが認められないときに添付された資料から他の請求として構成することが可能でありそのような構成をとった場合に障害給付の受給につながる余地があるのであれば、この構成を拒否することを拒否するような特段の事情がない限り、予備的にこの構成による請求をも黙示的に行っていると見るのが相当である。

 本件において特段の事情が見られないことから予備的には前発障害による事後重症請求がなされているものと見ることができる。

 そこで本件障害の状態が2級の程度に該当するか問題となる。

[論理] 国年令別表は障害等級2級の障害給付が支給される障害の状態を定めている。

 そして具体的基準として障害認定基準が定められているが、給付の公平を期するための尺度としてこれに依拠するのが相当である。

 本件における強皮症は難病とされることから「第18節 その他の疾患」にに依拠すべきである。

 その他の疾患の障害の障害の程度は全身状態・栄養状態・年齢・術後の経過・予後・原疾患の性質・進行状況等具体的な日常生活等を考慮し、総合的に認定するものとし、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級とする。

 本件における状態を総合勘案するならばそれは日常生活が著しい制限を受けるか日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度に至っていると認められる。

 したがって2級の程度に該当する。

[解説] 本件では初めて2級の請求をしたものであるが請求人の意思を推測して特段の事情がない限りは事後重症請求の黙示の請求があったものとみなして判断している事例である。

 通常訴訟では旧請求をめぐる裁判資料を申請級の資料に利用でき、かつ、新旧両請求の利益関係が社会生活上共通する場合は訴えの変更をすることができる。この訴えの変更には追加的変更と交換的変更の場合がある。

 本裁決例ではこのような手続きをとらず黙示の請求があったものとして判断している。迅速な解決には必要な対応であるが、請求の変更の手続きは用意しておいた方がよいだろう。