不服申立て裁決例 重婚内縁

★不服申立て再審査請求社会保険審査会で内縁の配偶者に遺族厚生年金が出るかが争われた事例。

[問題] 受給権者が死亡した場合についてその死亡当時その者によって生計を維持したその者の配偶者(内縁の配偶者を含む)に遺族厚生年金が支給される。

 受給権者に戸籍上届け出のある妻のほかに内縁の妻がある場合においては婚姻の成立が届け出により法律上の効力を生じることとされていることから届け出による婚姻関係を優先すべきことは当然にことである。

 内縁の妻は受給権者によって生計を維持していた事実のほかに受給権者と戸籍上の届け出のある妻との婚姻関係がその実態を全く失ったものとなっているときに限り遺族年金を受給できる配偶者に当たるものとされている。

  1 公の死亡当時、甲と戸籍上の妻である乙都の婚姻関係がその実態を全く失ったといえるか。

  2 請求人と甲とが生計維持関係にあったのか。

 

[論理] 1 甲と戸籍上の妻である乙とは住民票上の住所は別々である。

 乙が提出した申立書では「別居期間中における経済的な依存関係はなし」としている。

 また、乙が甲にかかる遺族年金の受給権を放棄する旨の公証人の認証を受けた文書を作成しているのは甲との経済的依存関係がなかったことを辞任したものである。

 さらに甲は乙と離婚する意思があった者と認められる。

 これらを総合すると甲と乙との婚姻関係はすでに実体を失って形骸化していたと見るのが相当である。

 2 甲の死亡当時請求人が同人と生計を同じくしていたこと及び請求人の年収が850万円未満であったことは明らかである。

 したがって生計維持関係はあった。