慢性腎不全(移植腎不全)(初診日)

★不服申立て再審査請求の裁決例を使ってできるだけわかりやすく論理の流れを追ってみました。

[問題提起 1] 移植腎不全は20歳前に発症した慢性腎不全に起因するものか。

 

[規範定立]    生体腎移植の追跡調査によれば移植後15年以上経過すれば半数以上が

               生体腎の機能低下による慢性腎不全で再透析等が必要になる

                                 ↓

            生体腎移植後まったく別個の原因で慢性腎不全を発症することはあるが

                  一般的には移植に伴う原因によるものである

 

[あてはめ] 本件においてまったく別個の原因で慢性腎不全を発症したことを裏付ける資料を提出していない

 

[結論]          移植腎不全は20歳前に発症した慢性腎不全に起因したものである

 

 

 

[問題提起 2]  社会的治癒を認めて移植腎不全の発症日を初診日と認めることはできないか

 

[規範定立] 社会的治癒は持続的服薬があってもそれが予防的服薬の範疇にあると認められ

                寛解状態が相当期間続き社会保険の被保険者として

           健常者と変わりない職業生活を送っていると判断できる場合には認められる

 

[あてはめ]    本件において免疫抑制療法は体内に異物(移植腎)を取り込んだことにより

                   現に生じている免疫反応を抑制するものである

                                ↓

        これはおさまっている症状の悪化を防ぐという予防的服薬の範疇にあるものとはいえない

 

[結論]        社会的治癒を認めて移植腎の発症日を初診日と認めることはできない