慢性腎不全(重複請求)

[問題] 本件傷病(慢性腎不全)と帰結給付対象傷病(慢性腎不全)とが同一傷病と認められるか。

[論理] 初診日に関する証明資料は直接それに関与した医師または医療機関が作成したもの又はこれに準ずるような証明力の高い資料でなければならない。

 そして障害の程度を認定するための具体的な基準として障害認定基準があるが給付の公平を期するための尺度としてこれに依拠するのが相当である。

 障害認定基準によれば初診日とは障害の原因となった傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいう。

 本件において請求人は慢性腎炎のため始めて医師の診療を受けたのは請求人が20歳到達前である____と認めるのが相当である。

 そして請求人にかかる慢性腎炎はその後において其の病態が徐々に増進し高血圧を伴う腎不全状態になり、さらに慢性腎不全に対して人工透析療法を開始することとなったと認めることができる。

 したがって本件初診日は既決給付対象傷病の初診日と同一と認めるのが相当であり、本件請求傷病と既決給付対象傷病は連続する一連の同一傷病と認められる。

[解説] 本件は20歳前障害の慢性腎不全と現在の慢性腎不全との間に社会的治癒が成立したのではないかも問題とされている。

 社会的治癒とは傷病が医学的意味では治癒したとは言えないがその症状が消滅して社会復帰が可能となり、外見上治癒したといえる状態がある程度の期間にわたって連続することである。

 本件ではいずれ血液透析が必要と診断されておりその症状が消滅したというには無理がある。

 すなわち医学的な観点からは徐々に腎機能が悪化して血液透析が必要となる段階にまで病態が増進していたとみるのが相当である。