両網膜色素変性症(初診日)

[問題] 障害厚生年金を受給するためには傷病の初診日が障害厚生年金保君の被保険者であった間であることが要件の一つとなる。

 そこで初診日がいつか問題となる。

[論理] 初診日に関する証明資料は直接これにかかる診療を行った医師ないし医療機関が診断が行われた当時に作成された診療録等の客観性のある医療記録の記載に基づいて作成した診断書又はそれらに準ずるような証明力の高い資料でなければならない。

 網膜色素変性症は先天性とされているものの生下時に当該傷病に起因する症状がすべて完成し、それがそのまま恒常的に持続していくものではなく時間の経過に伴って各症状が発現し、それは経過中に一度も改善することなく徐々に進行していくとされている。

 すなわち主症状である夜盲・視力低下・視野障害についてみると多くの場合20歳ないし40歳ころに最初に夜盲に気づきその後において視力低下と周辺視野障害が発現しそれが緩除進行性に憎悪し、最終的には著しい視力低下と高度の視野狭窄になるとされている。

 以上の医学的経過をも考慮し、診断書に基づいて初診日についてみると発病年月日は不明とされているものの主症状である夜盲・視野狭窄を主訴として医療機関を初めて受信した日を本件初診日とするのが相当である。

[解説] 初診日証明には証明力の高い資料を用いなければならない。

 ここで証明力とは証拠が事実についての心証を形成させる力のことをいう。

 また、証拠能力とは証拠として事実認定に用いることの適格性をいう。

 行政手続きの段階で証拠方法を証明力の高い証拠に限定するのは、国民の権利を迅速にも盛るため証拠調べ手続きを省略しているからである。

 不服申し立てでは審査請求後再審査請求を経ずに取消訴訟を提起できるのでこの点は判断材料とされたい。