アッシャー症候群(初診日)

 今回はアッシャー症候群で初診日が問題になった事例について少し考えてみます。

 本件ではアッシャー症候群と関連性のある網膜色素変性症で20歳を超えた日を医証で特定することは可能と考えられます。しかし請求人がそれを行わず20歳前障害を主張する背景には保険料納付要件が満たせないことが考えられます。

 多くの裁決例を見ますと請求人が主張する初診日にこだわらないことが読み取れるといって他の日を認定することがたまにあります。手続的には請求人の主張の当否を審査請求で認定するのであり、請求人の主張以外の事実を認定することはできず、請求の変更手続きを必要とします。相手方に不意打ちとなるからです。しかし簡易迅速に国民の権利を守るという趣旨から職権主義的な規定を置いている審査請求では提出資料から判断可能で請求人が明確に自己の主張にこだわらない限り柔軟に対応しているものと考えられます。

 ここで初診日に関する証明資料は直接これに関与した医師または医療機関が作成したもの、またはこれに準ずるような証明力の高い資料でなければなりません。

 本件に提出された初診日認定的確資料では20歳前に診療を受けた事実を証明するものはない。

 ただしアッシャー症候群と関連性のある網膜色素変性症で小学校で夜盲が出現していた事実、並びに可能性が高いとする医証の提出がある。また第三者証明も提出されており夜盲が出現していた事実を記載する内容となっている。

 とするとこれらが証明できるのは夜盲の出現の事実であり、20歳前にアッシャー症候群と関連性のある網膜色素変性症で診療を受けた事実ではない。

 もう一点提出されているのは眼科医への支払いを明記した家計簿であるが、よく言えば夜盲の生じている時期に眼科へ通ったのならば網膜色素変性症の初診日と推測することも可能であるといえるかもしれません。

 しかし裁決例は否定しました。

 そのため初診日を確定できず障害年金は支給されませんでした。