不服申立て裁決例 重婚内縁2

★不服申立て再審査請求社会保険審査会で内縁の妻が遺族厚生年金の配偶者かどうかを争った事例。

[問題提起]  請求人は重婚的内縁関係にある者であるが遺族厚生年金の配偶者といえるか。

 

[論理]  老齢年金の受給権者が死亡した場合その者の死亡当時その者によって生計を維持していた配偶者に遺族厚生年金が支給される。

 ここで配偶者とは婚姻の届け出はしていないが婚姻関係と同様の事情にある者を含む。

 しかし、重婚的内縁関係にあるものは法律婚主義から内縁関係よりも届け出による婚姻関係を優先すべきである。

 したがって重婚的内縁関係にある者については届け出による婚姻関係がその実態を全く失ったものになっているときに限り内縁関係にある者が「婚姻の届け出をしていないが事実上の婚姻関係と同様の事情にあるもの」と認定できるかが問題となる。

 ここで事実上の婚姻関係とは、①当事者間に社会通念上夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようという合意はあるか、②当事者間に夫婦の共同生活と認められるような事実関係はあるか、で判断する。

 また夫が戸籍上届け出のある妻以外の女性と事実上の婚姻関係にあった場合について届け出による婚姻関係がその実態を全く失ったものとなっているときはと席条届け出のある妻が夫との事実上の婚姻関係を解消することを合意した上で夫の死亡に至るまで長期間別居し、婚姻関係が実態を失って形骸化し、かつその状態が固定化している場合をいう。

 本件においてAとBが離婚について合意した事実は認められない。

 そうすると届け出による婚姻関係がその実態を全く失ったものということはできない。

 したがって請求人が婚姻の届け出をしていないが事実上の婚姻関係と同様の事情にある者似るものとはいえない。

 よって遺族厚生年金の配偶者とはいえない。

[解説]  内縁とは婚姻意思をもって共同生活を営み社会的には夫婦と認められているにもかかわらず法の定める届け出手続きをしていないため法律上は正式の夫婦とは認められない男女の結合関係をいう。

 すなわち婚姻の届け出がある場合には協議上の離婚、裁判上の離婚の手続きを踏まなければ離婚できない。

 特に有責配偶者からの離婚請求は判例で厳格な要件が要求され容易ではない。

 それゆえ内縁配偶者の生活保障という観点からこの問題が生じている。