双極性感情障害(社会的治癒)

 今回は双極性感情障害で初診日が問題になった事例について少し考えてみようと思います。

 請求人の主張によれば20歳前に双極性障害で診療を受けているが、後に社会復帰し厚生年金被保険者となり、その間に重症化していることから社会的治癒が成立し後に診療を受けた日を初診日とするべきであるとしている。

 ここで医学的に見て治癒したといえる場合には前後の傷病は別個の傷病となるので、後の傷病の初診日が初診日となることに問題はない。これに対し医学的に見て治癒したとはいえない場合でも長い間社会復帰し治療の必要のない(予防的治療を除く)場合でも同一の傷病となり初診日は社会復帰前の初診日が使われることになる。これでは社会復帰したあとの厚生年金被保険者期間が無駄になってしまう。

 そのため社会的治癒という概念を認め、これはあくまでも被保険者の利益保護のための概念であることから社会的治癒の主張は請求者本人の意思に任せる対応となっている。

 医学的観念から見てみるとうつ病の個々のエピソードは、3ないし12ヶ月間持続し、各エピソードの間にはほぼ完全に回復するものの数ヶ月から数年の間欠期を経て再び病巣が反復することとなる。

 そして自然寛解することは多くはなく再発率は高い。その再発の有無は医師の処方による服薬に強く依存し急に中止すると高い確率で再燃することになる。

 本件において請求人は医師の治療により改善してきたことから無断で治療を中止し再び再燃していることがうかがわれる。

 とすると医師の管理下に置かれなければ再燃は防げず、この治療は予防的治療とは異なる。よって治療が必要ないとはいえず社会的治癒は成立しない。

 従って障害厚生年金の支給は認められませんでした。