不服申立て裁決例 重婚内縁

★不服申立て再審査請求社会保険審査会で内縁の妻に遺族厚生年金が出るかを争った事例。

[問題] 老齢厚生年金保険の受給権者が死亡した場合に、その者の配偶者でその者の死亡の当時その者によって生計を維持していた者に遺族厚生年金を支給する。

 ここにいう配偶者には婚姻の届け出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。

 重婚的内縁関係が存在する場合には死亡したものと内縁関係にあった者はその者が死亡した者によって生計を維持していた事実のほかに法律上の婚姻関係がその実質を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化している場合に限って遺族厚生年金を受給することができる配偶者に当たる者と解される。

 次に「死亡した者によって生計を維持していた配偶者」とは死亡したものと生計を同じくしていた配偶者であって年額850万円以上の収入、又は、年額655万円以上の所得を将来にわたって有すると認められる者以外のものとされている。

 1 甲の死亡当時同人と利害関係人との婚姻関係が形骸化し、かつ、その状態が固定化したと認めることができるか。

 2 請求人が甲によって生計を維持していた配偶者であったと認めることができるか。

 

[論理] 1 甲は利害関係人と別居し死亡するまで長期間にわたり別居を継続していた。

 別居の理由として利害関係人と甲が不なくとなって双方が別居を決意し離婚に向けた話し合いを進めたが利害関係人は押印に応じず、その後甲は請求人と同居し生活を共にしたことから利害関係人との別居が長期化したものである。

 利害関係人は甲から生活費の支給を受けたと述べているがそれは両者の離婚を前提とした慰謝料もしくは財産分与に相当すする金員であったと見るのが相当である。

 甲から利害関係人に対する定期的送金の事実は認められるが、少額の送金であるから、それをもって別居期間中生計を同じくしていたと認めることはできない。

 さらに、厚と利害関係人は別居解消に向けて前向きな話し合いをしたなど形跡は全くうかがわれず、両名に婚姻共同体を維持しようとする積極的な意思があったと推測されるものもない。

 このような事情を総合勘案するならば両名の婚姻関係は甲死亡当時において形骸化し、かつ、その状態が固定化していた者と認められる。

 2 請求人が甲と長期間にわたり同人の死亡まで事実上の婚姻関係を継続してきたことは明らかである。

 そして請求人の合計所得金額は0である。

 したがって甲の死亡当時請求人は甲によって生計を維持してきた配偶者であると認定するのが相当である。