民法734条婚姻期間

[問題] 亡被保険者と民法734条が禁じる内縁の配偶者は遺族厚生年金の受給権を有するか。

[論理] 婚姻制度は一つの社会制度であり厚生年金保険法3条2項はこのような社会制度としての婚姻関係について規定した民法の婚姻法秩序を前提として婚姻の届け出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものを政府が干渉し事業主及び被保険者から強制的に徴収した保険料で基本的にその費用が賄われ、公的性格を有する厚生年金保険制度の中でそのものの老後生活等の安定のため婚姻の届け出をした者と同様に扱おうとする趣旨である。

 そうすると一種の公的給付と解すべき遺族厚生年金について法3条2項が民法の婚姻秩序を前提にしている以上民法734条から736条までの規定に反するものは排除されるべきである。

 最判平成19年3月4日は社会的時代背景のもとに形成された三親等内の内縁関係については①それが形成されるに至った経緯 ②周囲や地域社会の受け止め方 ③共同生活期間の長短 ④子の有無 ⑤夫婦の安定性等に照らして、反倫理性、反公共性が婚姻法秩序維持等の観点から問題にするに至らない程度に低いと認められる例外的場合には近親間の婚姻を禁止すべき公共的要請よりも遺族の生活の安定という遺族厚生年金制度の目的を優先させるべき特段の事情がある。

 本件の場合請求人の老後生活は同居する亡被保険者の旧法老齢年金で支えられていたといえるが、それが亡被保険者の死亡により請求人の遺族厚生年金に転化しない限り無年金者となり老後生活のすべを失うことになる。

 そして反倫理性、反公共性は婚姻法秩序等の観点から問題にするに至らない程度に低い。

 したがって内縁の妻として遺族厚生年金の受給権を有する。

[解説] 本件では法文を形式的に当てはめると結論の妥当性が測れないことから遺族厚生年金の生計を維持された遺族の生活保障という趣旨から婚姻法秩序の維持と遺族の生活保障を様々な観点から利益香料した事例です。