不服申立て裁決例 収入要件3

★不服申立て再審査請求社会保険審査会で生計維持要件の有無を収入要件で争われた事例。

[問題]  請求人が甲死亡当時年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものであって、甲によりその生計を維持していた者と認められるか。

 

[論理]  厚生年金の被保険者が死亡した時その者の遺族に遺族厚生年金が支給されるがその遺族が配偶者である場合はその者の死亡の当時その者によって生計を維持したものであることを要し、かつ、年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外でなければならない。

 遺族厚生年金の受給要件である生計維持関係の認定について生計同一要件及び収入要件を満たす場合に被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定する。

 収入要件については

① 前年の収入が年額850万円未満であること

② 前年の所得が年額655万5千円未満であること

③ 一時的な所得があるときはこれを除いた後①②に該当すること

④ 近い将来収入が年額850万円未満または所得が655万5千円未満となることが認められること

 ここで近い将来とは保険事故の発生からおおむね5年以内とする。

 本件において請求人の収入は収入要件①②③を充足しないことは明らかである。

 そこで④を満たすか。

 甲は資格を有する税理士であって税理士事務所を主宰していたものである。

 そしていわゆる士業の個人事業は専門家としての能力や信用によって支えられているものであり、当該税理士が死亡した場合には顧客が離れていくだけでなく、受任していた業務を他の士業に引き継ぐのはこの業界における常識である。

 したがって甲死亡時点において請求人に残された収入は近い将来年額850万円未満または所得が年額655万5千円未満となることが客観的に認められる。

 よって④の要件を満たし、請求人は生計を維持しているものといえる。