刑事政策(精神障害者の犯罪)

前提としてお話ししておきますが精神障害者の犯罪は交通関係業過事件を除く全刑法犯の0,5%くらいです。一般人の比率よりはるかに低い発生率です。精神障害者と犯罪を結び付けるような偏見がありますがこれは誤解です。

別項で論じたとうり責任能力のない者の行為には犯罪は成立しません。犯罪が成立するには規範に直面して反対動機が形成できるにもかかわらずあえて行ったことに対する非難可能性にある。責任能力は事物の是非善悪を弁別しかつこれに従って行動する能力である。とするならば責任能力がなければ非難可能性もないことになる。

しかし犯罪とならないからといってそのままにしておけば本人のみならず他者の損害も大きくなる。それゆえに精神保健福祉法上の措置入院が行われる。

治療により治すことが何よりも大切なわけである。

しかし措置入院には問題点もある。

①司法的な抑制の方法がない

②措置入院を認める比率が地域により大きく異なる

③入院の不当な継続がおこなわれたり、十分治癒していないのに措置を解除し再び問題が生じることがある。

そこで保安処分が検討されている。

ここで保安処分とは行為によって表明された行為者の危険性に対応する手段であり裁判所によって言い渡されるところの自由の剥奪または制限を伴う隔離又は改善の処分である。

あくまで治療により自傷他害の危険性を除去するという目的は措置入院にしろ保安処分にしろ同じである。

ただし裁判所の判断治療についての最善の方法を見つけ出せるとは思われない。とするならば司法的抑制はあくまで補助的なものと位置ずけられるべきであろう。

ならば治療について意思の判断が優先されるべきでまず医療の枠組みの中で検討されるべきである。それが不可能な場合に保安処分が考えられるべきである。