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中度精神遅滞(障害等級)

[問題] 障害認定日(20歳)における精神遅滞による障害の状態が国年令別表に該当すると認めることができるか。

[論理] 1 障害基礎年金の裁定において裁定請求にかかる障害の状態がいかなるものでそれが国年令別表に定める障害の程度に該当するかどうかは受給権の発生・給付の内容にかかわる重要なことであるからその認定は客観的、かつ、公平に行われなければならない。

 それゆえに障害の状態がいかなるもので国年令別表の程度に該当するかどうかはその障害の状態について直接診断を行った医師ないし医療機関が診断当時に作成された診療録等のいわゆる医証の記載に基づいて作成した診断書またはこれに準ずるものと認めるような証明力の高い資料によって行われなければならない。

 したがって障害の状態について認定対象時期を現症とする診断書が提出されていない場合には、障害の状態がいかなる程度かを認定することができないとするのもやむを得ないものといわなければならない。

 そして異なる時期を現症とする診断書やその他の資料によって認定対象時期における障害の状態を推定して認定することは例外的取り扱いとして慎重に対応することが要請されている。

 2 次に障害の程度を認定するためのより具体的な基準として障害認定基準があるが給付の公平を期するための尺度としてこれに依拠するのを相当とする。

 障害認定基準では知的障害の認定に当たっては知能指数にのみ着眼することなく日常生活の様々な場面における援助の必要度を勘案してそうが尾的に判断する。

 日常生活能力等の判断に当たっては身体的機能及び精神的機能、特に知情意面の障害も考慮の上社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるとしている。

 医学の一般的知見によれば知的障害者の知的能力は知能指数の見から見ると年月が経過してもさほどの変化がみられるものではないが、日常生活能力等の程度は社会生活への適応能力によって変動するものであり毎日の生活活動を繰り返し積み重ねることによって学習ができる場合がある半面、生活の質の向上に適応できずあるいは置かれている社会環境の変化に適応できずに従来は実施することができた日常生活活動ができなくなることも生じることがあるとされている。

 つまり知的能力自体には明らかな変動がなくて知的障害者がおかれた家庭や生活環境あるいは社会環境等によってその能力が変動する可能性が生じうるものであり幼少時からすでに知的障害が固定されているものと考えられている当該傷病においてもその障害認定においては年月の経過に従って、あるいは置かれている生活や生活環境への適応能力の変動によって障害の状態の程度が変わりうるものといわなければならない。

 3 これらの点を総合勘案するならば障害認定日の現症の診断書がない場合に知的障害が固定されているとしても他の時点の診断書により認定日の障害の状態を推測することはできない。

 したがって本件障害の状態については国年令別表に定める程度に該当するかどうかを認定することができる資料がないといわざるを得ない。

[解説] 本件では障害認定日の診断書がないことから傷病の性質と他の時点の診断書を組み合わせて障害認定日の障害の状態を判断しようとした事例である。

 知的障害は症状が固定されていても学習により日常生活能力が向上したり、社会環境の変化に適応できず日常生活能力が低下したりすることもあり、障害認定日の診断書がない場合には判断できないとしたものである。

 

118 知的障害(障害等級)も参照して下さい