広汎性発達障害(診断書未提出)

[問題] 1 20歳前の障害において20歳到達時の診断書がなく当該傷病の障害の状態を認定できるか。

2 厚生労働大臣がした次回診断書提出の期日指定を取り消し次回診断書提出は不要との処分を求めることはできるか。

[論理] 1 障害基礎年金の障害認定に当たってはその傷病について直接診断を行った医師が診断当時に作成した診断書または、医師が診断が行われた当時に作成された診療録等に基づいて作成した診断書または、これに準ずるような信用性の高い資料によって行われなければならない。

 提出された診断書は20歳当時より?年もあとの現象日で作成され当該傷病の性質を考慮しても20歳到達時における障害の状態を認定することは無理である。

 したがって本件については本件障害の状態を認定することのできる資料が存しないものというほかない。

2 審査請求審査請求再審査請求な対象とされるのは社保審法に規定されている厚年法等における「処分」に限られている。

 ここで「処分」とは行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するのではなく、公権力の主体たる国または地方公共団体の行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものを言う。

 現状診断書を提出する期日指定は保険者内部における意思決定を行うための事実行為であって、この行為によって当該受給権者の権利義務を形成しまたは範囲を確定する効果を伴うものではない。

 したがって本件期日指定は「被保険者の給付に関する処分」には当たらない。

 とすると本件期日指定を取り消し次回診断書提出は不要との処分を求めることは不適法であり却下すべきものとする。

[解説] 本件における第一の問題点は障害認定に当たっては診療録等の医証に基づく診断書によってなされなければならない。しかし診断書の現象日が認定日よりも数年もたった日のものでは障害状態を認定することはできない。

 次に審査請求再審査請求の対象は社保審法に記載されている厚年法等の「処分」に限られている。そして処分を公権力の主体たる国または地方公共団体が行う行為のうちその行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものと限定的に解している。

 そして期日指定の効果は権利義務を形成しまたはその範囲を画する効果を行う意思決定の前提であるから「処分」には当たらないとする。

 しかし現状診断書を提出しなければ支給停止され提出まで続くのならば事実上権利義務の形成と同じ効果が伴うといえないだろうか。

 なお20歳に達するまでに障害基礎年金の障害の状態にあればこの障害児を監護する父または母に特別児童扶養手当が出る。そして20歳からは障害基礎年金が本人に支給されることになる。