53 悪性褐色細胞腫脊椎転移(初診日)

 今回は悪性褐色細胞腫脊椎転移で障害等級が問題になった事例について少し考えてみようと思います。

 ポイントは転移があったと判断されれば初めて診療をしたときが初診日となり、判断できなければ再診時が初診日となることになります。

 本件では良性の褐色細胞腫で病院を受診、手術さらに転移し手術、その後10年間再発がないことから検査を中止したが、その後再発手術に及んでいる。この10年を超えて転移したかが争点と言うことになる。

 ここで医学的見地から褐色細胞腫を見てみると、しばしば再発し時には遠隔部位への転移も生じることから当初良性とされていたとしてもその後少なからず再発や転移の可能性を有する腫瘍であることが知られており、どのような場合にも長期間の厳密な経過観察を要するものとされている。

 本件において最初に摘出された腫瘍の病理組織は褐色細胞腫と病理診断されており、その後再発した腫瘍も病理学的に褐色細胞腫とされている。そして同じ褐色細胞腫が転移した経過から見て再発時まで継続する同一の新生物と認めることが相当である。

 したがって最初に褐色細胞腫と診断された日を初診日とする。