169 捻挫(健康保険法 療養費)

 今回は健康保険法の療養費が支給されるかが問題になった事例になります。

 ここで療養費は保険者が療養の給付等を受けることが困難と認めるとき、または保健医療機関等以外の診療を受けることがやむを得ないときに支給される。

 すなわち療養費の支給は療養の給付の補完的役割を果たすものであり選択を認めたものではない。

 そして「困難」「やむを得ない」かは保険者の裁量に任されます。

 柔道整復師の施術については施術算定基準が定められています。

 これによれば療養費の支給対象に対することとして療養費の支給対象となる負傷は急性または亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり内科的原因による疾患は含まれないこと、単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は療養の支給対象外であり柔道整復の治療を完了して単にあんまのみの治療を必要とする患者に対する施術は支給対象とはしない。

 本件において柔道の練習を継続しながら4ヶ月に78日もの極めて長期にわたり施術が行われている。そして左足関節捻挫、腰部捻挫、左股関節捻挫と次々に新たに負傷を招いていることから考えると保険者の裁量権を逸脱したものとは認められない。

 すなわち柔道の練習で生じた急性の捻挫とはいえ、これだけ長期にわたる治療を必要とするのならば保健医療機関にかかるべきであり、それが困難とか柔道整復師にかかることがやむを得ないとまではいえないだろうということです。これは道場と柔道整復師が一体化していることから便利ではありますが法の趣旨からは認められないということでしょう。