内縁

[問題] 遺族厚生年金は老齢年金の受給権者が死亡した者の配偶者(婚姻はしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)で、その者の死亡当時そのものによ手生計を維持した者に支給される。

 亡Aの死亡当時同人と婚姻関係と同様の事情のない請求人に対し遺族厚生年金を支給するべきか。

[論理] 本件ではぼうAとBとの間に内縁関係を認めていたが、後にそれを取り消し請求人との間に内縁関係を認めた。しかしそれは極めて杜撰な調査によるもので請求人との間に夫婦同様の関係はなかった。

 そのため請求人に対する遺族厚生年金の支給決定を取り消す旨の処分をしている。

 ここで受益的処分がたとえ法令の規定にい廃していても、その取り消しが信義公平の原則から許されない場合がある。

 しかしそのような取り扱いは法による支配の観点から限定的であるべきであり、行政に著しい注意義務違反等があり、かつ、それを取り消さないことが交易を実質的に侵害しないといった特段の事情がある場合に限られる。

 本件においてたしかに行政の杜撰な調査という注意義務違反はある。

 しかし、法は遺族の生活保障のため遺族年金を認めている趣旨から婚姻関係の認められない者に遺族年金を認めることは法の趣旨に反し公平を侵害することになる。

 したがって請求人に対し遺族厚生年金を支給すべきではない。

[解説]信義則は個別具体的な条文を使って結論の妥当性が測れない場合に使う最後の手段である。それゆえに具体的な事情を利益考量をしてこれを認めることが明らかに許されないという特段の事情が必要である。

 なお内縁とは婚姻意思をもって共同生活を営み、社会的には夫婦と認められているにもかかわらず、法の定める婚姻の届け出手続きをしていないため法律的には正式の夫婦と認められない男女の結合関係、のことをいいます。