慢性腎不全(移植腎不全)(初診日)

[問題] 本件は移植腎不全を初診日として請求したが、保険者はそれより以前の慢性腎炎の初診日を認定した。そこで、①移植腎不全は慢性腎炎に起因するものか、②社会的治癒は認められるかが問題になる。

[論理] ①一般的には移植人が腎不全症状を起こせばそれは移植に伴う原因であると考えるのが相当である。

 しかしそれを裏ずける資料を何ら提出していないので20歳到達前に発症した慢性腎炎と移植腎不全との間には相当因果関係が認められ慢性腎炎に起因したものと認めざるを得ない。

 ②持続的服薬があってもそれが予防的服薬の範疇にあり、寛解状態が相当期間続き、社会保険の被保険者として健常者と変わりない職業生活を送っていると判断できる場合は社会的治癒を認める。

 免疫抑制療法は免疫反応を相当程度の信州的方法により抑制するというものであり予防的服薬の範疇にあるものとはいえない。

 ③以上より20歳前に発症した慢性腎炎に起因するものとしてなされた処分は適法かつ妥当である。

[解説] 本件は移植腎不全と30年も前の慢性腎炎との間の相当因果関係が認められた上で社会的治癒を否定したものである。

 本件で注意していただきたいのは相当因果関係を肯定した理由が請求人が相当因果関係を否定する資料を提出しなかった点である。これは法律効果を主張する者が要件事実について主張立証する責任を負う法律要件分類説をとったものであろう。

 不服申立てをする場合には証明責任を意識していただきたい。