77 外傷後ストレス障害(重複請求)

 今回は外傷後ストレス障害で重複請求が問題になった事例について少し考えてみようと思います。

 本件では障害認定日3級が認定されているが、再度同一傷病で障害認定日請求しました。

 前提ですが外傷後ストレス障害は神経症圏に属する障害であることから多くが認定対象外とされています。これ自体問題のある考え方ですがなぜ本件で3級認定されたのかわかりません。障害年金は労働能力との関係で等級判断されることから見ればよい傾向であると思います。

 本題について戻すと同一の事情の下で同一の傷病の請求は2度とできない。すなわち事後重症請求や初めて2級の請求は時間的範囲が異なることから同一の事情とはいえず請求できることとなります。また障害認定日請求は障害認定日という時間的範囲は同一であるものの、異なるカルテを下にした診断書など新たな請求資料があれば同一の事情とはいえず請求は可能です。文字訴訟でも刑事訴訟でも再審請求は認められており証拠の新規性・明確性が認められて初めて再審開始決定がなされます。

 前回裁定請求が確定していることから不可争力が生じています。しかし全く異なる病院のカルテに基ずく診断書が提出されていることから再請求が認められました。

 

★不可争力とは裁判の形式的効力の一つで矛盾判断の防止を根拠としています。しかし新証拠の発見等で裁判の結論に誤りがあることが疑われる場合には真実発見の要請が大きく作用し例外が認められます。この点は障害年金などの概説書では説明されませんので民事訴訟法や刑事訴訟法のテキストを参考にしてください。