1 覚せい剤・アルコール中毒に障害年金は出るか

★ここに書かれていることは一般的な情報です。例えば覚せい剤使用についても具体的事例に即してみれば可能性は低いですが争う手段はあると考えています。ただし具体的事例に即して考えていかなければなりませんので詳細な事情とそれについて考える時間が必要となります。


障害年金は労働能力が失われた場合の生活保障である。一方障害年金(国民年金・厚生年金)は保険の一種で少ないお金を出し合い困ったときに助け合おうとするものである。またそれだけでなく税金も投入されています。このような障害年金をもらいたいがために故意に障害者になる場合は支給されないのは当然と言える。

法は「故意に障害またはその直接の原因となった事故を生じさせた者」には障害年金を支給しないとします(国年69,厚年73)。

これに対し「故意の犯罪行為若しくは重大な過失により又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより障害者若しくはその原因となった事故を生じさせ又は障害の程度を増進させたもの」には障害年金の全部または一部を行わないことができる(国年70、厚年73の2)。

ここで前者は絶対的に不支給となり、後者は任意的に全部または一部を不支給とする。これは前者が後者よりも行為の悪性が強いということができる。

すなわち故意とは刑法では犯罪事実を認識してこれを認容する事を言い、障害年金では障害が生じることを認識してこれを認容することと考える。

とすれば前者は障害の発生する事実を認識したうえであえて障害が生じる行為を行ったということになる。

これに対し後者は障害の生じる事実の認識を書き行った行為から結果として障害が発生したということになる。

では覚せい剤使用により精神の障害をきたした場合はどうであろうか。

覚せい剤使用は言うまでもなく犯罪である。そしてその使用は初めは興味本位で始めるものが多く強い精神依存を形成するためやめられなくなります。そのため知覚過敏・幻視・幻臭・妄想などを生じます。しかし障害が生じることを認識して使用するものはほとんどいないでしょう。とすると「故意の犯罪行為により障害を生じさせ」にあたり任意的不支給原因となるのでしょうか。

おもうに法は規範に直面した時に行動指針を定めたものでありそれは一般人を対象としている。とするならば通常の判断能力を有する一般人がその行為から障害結果を生じることを認識できれば障害の発生する事実を認識したうえであえて行ったということができる。

ここで覚せい剤は依存性を有し精神・身体に有害であることは広く知られ、またその輸出入・製造・譲渡・譲受・所持・使用は処罰されることは知れ渡っている。とするならば通常の判断能力を有する一般人の理解では覚せい剤を使用すればその依存性ゆえ精神身体に異常をきたすことは容易に認識できる。したがって覚せい剤を使用することは障害の発生する事実を認識した上であえて行ったということができる。よって覚せい剤であることを認識して使用して障害を負ったことは障害年金の絶対的不支給事由となる。

次にアルコール中毒はどうであろうか。

当たり前のことですが酒を飲むことは犯罪ではありません。酒は百薬の長などと言われ適量を飲む分にはむしろ体に良いともいわれます。

しかし覚せい剤ほどではないにしろ酒にも依存性はありひどくなれば手指の震え・自律神経症状・けいれん発作・幻覚が現れるようになります。ここまでくれば労働能力が失われたといえるかもしれません。

そして酒を飲んだとしても通常の判断能力を有する一般人の理解ではアルコール中毒になるとは考えられないので不支給になることはないのが原則です。

ただしアルコール性肝硬変は180日以上アルコールを摂取していないことが認定基準に掲げられている。

これは生活習慣を改めることにより改善できるのならばそれをしない限り生活保障をしないとするものである。

これは障害年金が保険の一種であり税金も投入されていることを考えれば自分の力で健康を取り戻せる方法があるのに努力しないものは助ける必要はないとする考えである。これが多数の考え方ならばアルコール中毒で障害認定を受ける際にもアルコール摂取の有無が大きな影響を与えると考える。現実には障害年金の申請には医師の診断書を必要としていることから酒を飲むということは「正当な理由がなく療養に関する指示に従わない」ということになり任意的支給停止に当たることになる。