刑事政策(保安処分)

刑罰とは犯罪に対する責任非難として科せられる害悪のことを言う。これに対して保安処分とは行為によって表明された行為者の危険性に対する手段のことを言う。

刑罰と保安処分の違いは①刑罰が責任非難を要素とするのに対し、保安処分は責任非難を要素としない、②刑罰は犯罪行為のあったことを前提とするのに対し、保安処分は犯罪行為を前提としない、③刑罰は過去の犯罪に対する応報として加えられるのに対して、保安処分は将来の危険性を除去すために加えられる。

保安処分は刑罰とは違うにしろ強烈な人権侵害を伴うものであることから単に危険性があるというだけでは正当化できない。人権侵害に比例する危険性の程度の除去を判断して行う必要がある。

それを中立公平な第三者である司法的統制にゆだねるのである。

ここで措置入院に保安処分を導入すれば自由剥奪を伴う人権制限の最も大きいものとなる。

現在措置入院は都道県知事が精神障害者を入院させなければ自傷他害のおそれを認め、指定医2人以上の一致がある場合に認められる点合理性はある。

しかし古くは患者のリンチ死事件が発生している。また、過剰医療・経済的措置入院・危険な患者の早期退院など問題点もある。

それゆえに行為者の危険性の有無を判断し、不必要な人権制限を防止し、十分に治療の効果を発揮するために補充的な司法的統制は必要となろう。