時効消滅(期間差止中の支払請求権)

[問題] 障害年金(1・2級)受給中のものが更新時に現状診断書等提出せず一時差し止めを受けた後に死亡した。

 そこで見支給年金の請求をしたが時効消滅を理由に請求棄却された。

 見支給年金の請求は認められるか。

[論理] 保険給付を受ける権利を基本権といい、気本件に基づき支払期月ごとに支払うものを支分権という。

 この支分権の消滅時効は各支払期月の翌月の初日を起算日とする旨の取り扱いが行われている。

 そして消滅時効は権利を行使できるときから進行する。

 本件において支払が差し止められた状態になっていたところこの間に亡Aによる支払請求権の行使は全くなかったのであるから特段の事情のない限り____を起算日として消滅時効は進行し5年を経過している。

 これに対し請求人は亡Aは統合失調症で意思能力を全く欠いた状態にあり現状診断書を提出することは不可能であり消滅時効の進行はなかったとする。

 ここで意思能力とは自分の行為の性質を判断することができる精神的能力であってその有無は行為ごとに個別的に判断されなければならない。

 本件差し止め期間中亡Aは意思能力を欠いたとまでは認めることはできない。

 したがって消滅時効の完成により見支給年金の請求は認められない。

[解説] 消滅時効は権利を行使しうるときより進行し時効期間の経過により時効の援用を条件として消滅する。

 時効の完成を知らず相手方の請求により権利の存在を認めた場合は権利の放棄とはならないが、信義則上時効の援用は認められない。くれぐれもご注意ください。