★不服申立て再審査請求社会保険審査会で遺族厚生年金の生計維持(収入)要件が争われた事例。
[問題]請求人は甲の死亡当時同人によって生計を維持していた生存配偶者といえるか。
[論理]厚生年金保険の被保険者で保険料納付要件が25年以上あるもの(適格被保険者)が死亡した場合、死亡した者の配偶者(生存配偶者)で当該死亡の当時適格被保険者によって生計を維持したものには遺族厚生年金が支給される。
そして適格被保険者によって生計を維持した生存配偶者とは被保険者と生計を同じくしていた配偶者で年額850万円以上の収入または年額655万5千円以上の所得(基準額)を将来にわたって有すると認められる者以外のものとされている。
生存配偶者が基準額以上の収入または所得を将来にわたって有すると認められる者以外かどうかの判定を保険者は原則として生存配偶者の前年の収入または所得が基準額未満かどうかで行うが、適格被保険者の死亡の時点で概ね5年以内に生存配偶者が基準額以上の収入または所得を有しなくなることが客観的に予見されている場合には例外的に適格被保険者死亡後の生存配偶者の収入または所得の変動を考慮に入れる運用を行っている。
本件において委員の唯一の医師で、かつ、経営者である医院長の立場にあった甲が死亡すれば委員が窮地に陥ることは明らかである。
また、後任が就任し医院を再開する可能性はあるが再開は7・8年後のことになる。
さらに甲の評価は高く、甲なきあとは同様の収入を得る見込みはない。
これらを総合すると、甲死亡の時点で概ね5年以内に請求人が基準額以上の収入または所得を得る見込みはない。
これらを総合すれば、甲死亡の時点で概ね5年以内に請求人が基準額以上の収入または所得を有しなくなることが客観的に予見されていたと認めることが相当である。
したがって生計を維持していた生存配偶者であるといえる。