[問題提起] 失踪宣告を受けた甲の配偶者である請求人が生計維持関係を認められるか。
[規範定立] 老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合そのものの死亡当時においてそのものの遺族に老齢厚生年金が支給されるが、その遺族がそのものの配偶者である場合にはそのものの死亡当時そのものによって生計を維持していたものであるとして生計を同じくし、かつ、年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものでなければならない。
そして生計維持対象者が死亡した者の配偶者であり収入要件を満たしている時住所が死亡者と住民票上異なっている場合に死亡者による生計維持関係が認められるためには次のいずれかに該当する必要がある。
ア 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
イ 単身赴任・就学又は病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが次のような事実が認められその事情が消滅した時は起居を共にし消費生活上の家計を一つにすると認められるとき。
(ア)生活費・療養費等の経済的な援助が行われていること
(イ)定期的に音信・訪問が行われていること
次に失踪宣告による死亡については生計維持関係を判断する「死亡の時」は「行方不明となったとき」とされる。
[あてはめ] 本件において「行方不明となった当時」は、住民票が実態調査によって職権消除された時とされている。
請求人は失踪宣告に起算日を覆すに足りる資料の提出がないことからこの日を「行方不明となった当時」と認定する。
この日において請求人は乙と同居し、仕事を持ち自分で生活していた。
とすると上記あ、イと認めることはできない。
[結論] したがって生計維持関係は認められない。