【問題提起1】 請求人は亡甲の兄であるが未支給年金を請求できるか。まず子である乙は請求人となるか。
【規範定立】 ここで認定対象者が死亡したものの子であり住所が死亡者と住民票上異なっている場合に死亡者による生計同一関係が認められるためには次のいずれかに該当する必要がある。
ア 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき。
イ 単身赴任・就学又は病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められその事情が消滅した時は起居を共にし消費生活上の家計を一つにすると認められること
(ア)生活費・療養費などの経済的な援助がおこなわれていること
(イ)定期的に音信・訪問がおこなわれていること
【あてはめ】 乙と甲とは住居を異にしていることからアに該当しないことは明らかである。
また乙は自立しており生活費・療養費等の経済的援助があったと認めることはできない。
さらに甲と妻丙が離婚の際乙は塀の戸籍に入籍しそれ以来甲との同居はない。
とするとイに言うその事情が消滅した時に家計を一つにするとは言えない。
【結論】 したがって乙は生計を同一にしたとはいえず請求人とはならない。
【問題提起2】 では請求人は甲と生計同一関係が認められるか。
【規範定立】 ここで認定対象者が死亡した場合が兄弟姉妹である場合住所が死亡者と住民票上異なっている場合に死亡者による生計同一関係が認められるためには次のいずれかに該当する必要がある。
ア 現に住居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
イ 生活費・療養費等について生計の基盤となる経済的な援助がおこなわれていると認められているとき
【あてはめ】 請求人と甲は住居を異にすることからアに該当しないことは明らかである。
しかし請求人と甲は同一住所地の建物の上階と下階に住んでおり、甲の食事の世話及び療養の援助等を恒常的に行っていることからイに該当する。
【結論】 したがって請求人に生計同一関係が認められる。