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★ 障害年金申請の問題点
2015年10月1日より初診日証明の方法が拡充されました。しかし初診日証明は事案により困難なものも少なくありません。そこで初診日証明になぜ医証を必要としているのかその背景を考えてみたい。
まず、権利救済には私的救済、行政救済、司法救済の方法がある。ここで司法救済とは終局的強制的な解決手段のため当事者の手続き保証を重視します。それゆえ証拠方法の無制限といって違法収集証拠に当たらない限りいかなる証拠でも証拠能力があるのが原則である。とすると初診日の証明に医証がなくても証明できるだけの証拠があれば医証は不要となります。
では証拠があれば初診日を認定できるかというとそうは簡単ではありません。初診日を認定するためには裁判官に合理的な疑いを入れない程度の心証を持たせなければなりません。そのために証拠能力のある証拠により証明しなければなりません。
ここで証拠能力とは証拠となりうる資格のことで証明力とは幼少事実の認定に役立つ程度のことを言います。
たとえば診断書や受信状況等申立書などの医証は診療録に基づいて記載され誤りが入りにくい性格を持っています。そして医証に疑義が生じれば診療録に戻り確認することができます。ちなみに刑訴223条では診療録は特信文書として無条件に証拠能力が認められます。
原則から考えていけば医証は医師の知覚・記憶・表現・叙述の過程を経て記載されることから証人尋問により誤りが入り込まないかを確認しなければなりません。その他証拠調べの方法として鑑定、当事者尋問、書証、検証があります。
強制的終局的解決手段で当事者の手続き保証を重視する司法手続きではこのような手続きを踏まなければならないので大変に時間がかかります。そこでもっと簡易迅速に救済を図る必要が出てきます。
ここで行政手続きは専門的技術的機関が迅速に国民の権利を守ることを目的とします。したがって司法手続きのように当事者の手続き保証を図るのと引き換えに証拠方法を正確性の高いものに限定し、専門家による迅速な解決を重視します。そのため証拠調べなどは時間がかかり手続き的に相いれません。そこで誤りの入りにくい医証を証拠として採用したのです。
しかしこれが問題となり診療録の保存期間が5年であることから廃棄される場合が多く生じたのです。診療録がなければ医証は作成できず行政手続きの要件を満たすことができません。すなわち初診日証明に医証が添付できない以上受理できないということになります。当然行政の処分があったわけではないので不服申立て、訴訟へと権利救済の手続きは使えないことになります。
そこで第三者証明など正確性の高いという形式的な証拠方法に限定せずより証明しやすい実質的な証明方法を認められたのです。
今後、行政の迅速性を維持したうえでどこまで実質的な証明方法が認められるかが重要課題となってくるでしょう。
★ これはあくまで私見ですのでご了承ください。