[事案] 前発障害では障害年金の支給要件を満たせず、基準障害とともに初めて2級を請求しようとするものです。ところが基準障害は障害認定日より4年も過ぎている場合です。この場合に初めて2級の請求に重複して障害認定日から請求月までの請求はできるかが問題になる。
[論理] まず、障害認定日請求は(国年30条1項・厚年47条1項)は障害認定日に支給要件が整っていることから障害認定日に受給権が発生します(国年18条1項、後年36条1項)。それゆえに障害認定日を超えて請求した場合でも障害認定日にさかのぼって障害年金が支給されます。
次に、事後重症請求(国年30条の2 1項,厚年47条の2 1項)は障害認定日に障害等級に該当しない場合65歳になる前に障害等級に該当すれば65歳前に請求することを要件に請求翌月より障害年金が支給されます。
そして初めて2級(国年30条の31項.厚年47条の3 1項)は前発障害が3級以下でありかつ基準障害が3級以下であれば併合して請求翌月から障害年金が支給されます(国年30畳の3項,厚年47条の3 3項)。ここで初めて2級の条文の1項は「併合して初めて1級または2級に該当するにいたったときに支給する]のだがそれは3項で「請求のあった月の翌月から始めるものとする]となっている。
とすると、支給は請求を要件として開始される以上初めて2級の受給権は請求を効力発生要件と考えることができる。これは「年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から初め](国年18条1項,厚年36条1項)としながらも請求を要件として請求翌月から支給するとする条文構造からも明らかである。
このように請求を効力発生要件と考えるのならば、請求以前の段階は何ら法的拘束力は発生していないはずである。ならば基準障害が障害認定日に3級の支給要件を満たしているのならば障害認定日から初めて2級の請求月までは3級の受給権が発生しているはずである。
したがって、請求翌月から初めて2級の支給が開始されるのと重複して障害認定日より請求月までは障害認定日請求(3級)の支給がなされると考える。
これは事後重症請求の構造と対比すればわかりやすい。事後重症請求は障害認定日に障害等級に該当しないからこそ障害年金が支給されないのである。それゆえ障害等級に該当した後に請求翌月から支給されることになるのである。
そして初めて2級は明確に障害認定日に3級の障害等級に該当し、かつ支給要件も満たしている以上障害認定日から請求月まで支給できない理由はありません。
[結論] 以上より初めて2級の請求に重複して障害認定日から請求月までの請求はできる。
★これはあくまで私見ですのでこのような運用がなされるかは不明です。