ここで初診日とは障害の原因となった傷病につき始めて医師または歯科医師の診察を受けた日をいいます。具体的には、①はじめて診療を受けた日、②同一傷病で転医があった場合は一番初めに医師等の診療を受けた日、③健康診断日は原則初診日とは扱わず初診日証明の医証が得られない場合に健診結果が直ちに治療を必要と認められる場合には請求者からの申し立てにより初診日と認められる、④障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病がある場合は最初の傷病の初診日が初診日となる。
初診日が重要なのは初診日に厚生年金に加入しているか否かで障害厚生年金が支給されるか否かが決まります。また障害基礎年金は1級・2級しかなく年779,300円の定額の年金となります。それに対し障害厚生年金は1級2級のみならず3級・障害手当金も支給されます。1級2級の場合には障害基礎年金も支給されるので圧倒的に有利です。そして障害厚生年金は平均標準報酬額により計算される報酬比例の年金で加入期間が短くても300月加算され、障害基礎年金が支給されなければ最低額(584,500円)が保障されています。
ちなみに障害手当金は症状が固定された場合に一時金として支給されるものです。症状が固定しなければ3級の障害厚生年金が支給されます。これは症状が固定していなければ将来1・2級となる可能性があるからです。
また初診日の前日においてその前前月までの被保険者期間において保険料納付要件が計算されます。
さらに初診日より1年6カ月後又はそれより前に症状が固定した場合はその月が障害認定日となります。障害認定日は認定日請求する場合にその日に障害等級に該当していなければ認められないので重要です。ここで症状固定とは治療の効果が期待できなくなった場合をいいます。
すなわち事後重傷請求・初めて2級請求の場合は請求翌月からしか障害年金が支給されないのに対して、認定日請求のみは請求が遅れても障害認定日にさかのぼって障害年金が支給されるのでとても重要です。
それゆえに初診日の証明資料は直接診療に関与した医師または医療機関が作成したもの又はそれに準ずるような信用性の高い資料でなければなりません。
だから転医がなければ診断書のみで初診日証明ができ、転医があれば受信状況等証明書を使うことになります。
これは行政手続きが専門的技術的機関が簡易迅速に国民の権利を守るという観点から証拠調べ手続きをしている時間をかけずに信用性の高い証拠により認定しようとする趣旨です。
これに対し取消訴訟を起こした場合は裁判が強制的終局的な解決手段であることから当事者の手続き保証を図り言いたいことは言わせる、すなわち証拠方法の無制限といって医証には限定されません。
もっとも行政手続き段階でも第三者証明は使えます。第三者証明とは三親等外の障害認定日当時の、または現在の状態を知るものの証明です。これは20歳前ならば2通以上の、20歳以後なら客観証拠と組み合わせて証明します。その意味は双方の間に論理矛盾をきたしていなければ証拠能力が認められ後は証明力の問題となります。すなわち簡易迅速な手続きを維持したまま実質的な証明方法を取り入れているわけです。
ちなみに3親等以内でも証明書として提出できますが三親等以内の親族の場合には障害年金を受けさせたいために有利な記載をしているとみられるので証明力は低くなります。
ここで証拠方法とは事実の存否を確かめるための資料のことで訴訟法では証人、鑑定人、当事者本人、書証、検証物が定められています。
また、証拠能力は事実認定の資料とすることのできる資格のことをいいます。
また証明力とは要証事実の証明に役立つ効果のことをいいます。
初診日の問題として20歳前障害の場合でも初診日の証明は必要となります。
20歳前障害は保険料納付要件が不要となる点、障害認定日が20歳のときかそれより遅れるかの点を決定するのに重要です。
また20歳前でも厚生年金に加入されている方はいらっしゃいますので障害厚生年金は出るかを判断するのに初診日は必要となります。
ただし傷病の性質から見て20歳前に症状を発し、20歳前に医師の診療を受けることが確実であるといえる場合には初診日証明ができなくとも診断書の傷病名から確認できれば20歳前障害と認められます。
知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう。
通常は20歳未満で医師の診療をうけていることが通常であることから知的障害は診断書で傷病名が記載されれば20歳前障害として初診日証明は不要ということになります。
もっとも、障害認定日である20歳のときに転医がある場合には受信状況等証明書をつける必要があります。私は不要と思うのですが年金事務所はつけるようにいってきます。受信状況等証明書はお金がかかってしまうことから取得できないと言って受信状況等証明書を添付できない申立書をつけようかなとも思っています。また5年のカルテ保存期間を過ぎカルテが廃棄されている場合には受信状況等証明書が添付できない申立書を使うことになります。この申立書を出したからといって初診日が証明されるわけではなく、通常は証明資料をつける必要があります。おそらく20歳前障害で知的障害の場合は証拠資料は不要と考えます。ただし療育手帳保持者は受信状況等証明書の添付は不要になります。
次に発達障害は通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、はじめて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受信日を初診日とする。この発達障害に自閉症やアスペルガー症候群が含まれています。したがって転医のある場合は必ず初診日証明を意識してください。
とするのならば初診日証明は必要ということになります。
なお、ひきこもりで障害年金受給できるのでしょうかという相談がありました。結論からいえば原因疾患が何かで答えは違います。すなわち不安障害などの神経症が原因の場合は障害認定基準が障害年金の対象にしないのでかなり困難になります。これに対し発達障害で人間関係がうまくいかずいじめに会ったことが原因ならば可能性があるということです。ここで問題なのは医師の診察を受けていない方は初診日から1年6カ月待たされることです。健康保険法では労働者本人を対象として1年6カ月傷病手当金が支給されます。しかし国民健康保険では傷病手当金は任意的記載事項となっておりほとんど規定されていません。とすると短期の生活保障である傷病手当金は引きこもりの場合機能しないわけです。そこでまずは医師の診察を受けていただきたいということです。
いま長々と初診日証明についてお話してきましたが転医がなければ診断書のみで初診日証明はできます。またカルテの保存期間の5年間を超えていなければ受信状況等証明書が使えます。それ以外の場合は個別に考えていかなければなりません。