障害年金の根拠になるのは国民年金法・厚生年金保険法です。すでに被用者年金の一元化が始まっておりますので共済については省かせていただきます。ではなぜこのような法律が作られたのでしょうか。
まず法律は国民を規律する規範であるのに対し、憲法は国家を規律する規範です。
日本国憲法は基本的人権の尊重を目的として、それを守るために国民主権・平和主義を定めています。いわゆる目的と手段の関係にあたります。そして国家は基本的人権を直接には制限できません。できるのは人権と人権とがぶつかりあったときに調整するだけです。
この基本的人権の一つに憲法13条前段個人の尊厳が規定されています。個人の尊厳とは人はそれぞれ個性があり一人として同じ人間はいません。だからこそその一人ひとりの個性を尊重しようとする規定です。
そのため学者の中には人権規定は個人の尊厳に尽きるというものもいます。しかしそれではあまりに人権規定が無内容なものとなるので包括的基本権・法の下の平等・自由権・受益権・参政権・社会権の6つが規定されました。
ちなみに包括的基本権とは個人の尊厳と新しい人権の根拠規定となる幸福追求権をいいます。法の下の平等とは国民から見て平等に扱えとする平等権を、国家の側から見て平等に扱わなければならないとする平等原則をいいます。自由権とは国家の干渉を排除する権利です。受益権とは請願権や裁判を受ける権利など人権保障を確実なものとする権利です。参政権とは国政に参加する権利です。そして日本国憲法は近代西洋市民革命の流れをくむ国民の権利を大切にするすぐれた憲法です。
この中の社会権は福祉国家の理想にもとずき、特に社会的経済的弱者を保護し、実質的平等を実現するために保障されるにいたった人権です。その内容は国民が人間に値する生活を営むことを保証するものであり、法的にみるとそれは国に対して一定の行為を請求する権利です。
本来資本主義社会は自助自立が基本です。しかし歴史的に自由競争によって発生する貧富の格差は犯罪の温床となり、又富の収奪としての戦争を巻き起こしてきました。社会権条項を認めることにより国家に人間に値する生活を請求する権利を認めることはこれを防止する意味もあります。
ここで注意すべきことは憲法とは国家が憲法に基づいた政治を行うことを国民と結んだ契約のことです。これを社会契約説といいます。それゆえ憲法尊重擁護義務は天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官、その他の公務員が負うものであり国民は負うことを規定されていません。そのため国家は憲法に基づいた政治を行うことが必要です。
すなわち全国民を代表する議員で構成される国会が憲法の趣旨を実現するために法律を制定し、内閣が法律に基ずいて政策を実行し、裁判所が憲法に基ずいた法律・政治を行っているかを判断するわけです。これを権力分立といいます。
そして社会権の総則的規定として憲法25条生存権規定がおかれています。1項は「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」、2項は「国はすべての生活部面において社会福祉・社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定します。
この2項を受けて国民年金法・厚生年金保険法が規定されたわけです。
それゆえ障害年金を受給することは国民の権利であるのでなんら躊躇することはありません。大きな顔をして請求しましょう。