強迫性障害(障害等級)

★不服申立て再審査請求の裁決例を使って論理の流れをできるだけわかりやすく追ってみました。

1 [問題提起]     請求人の強迫性障害を障害年金の認定対象障害から外したことは適法かつ妥当であるか。

 

[規範定立]       国年令別表には強迫性障害が障害給付の対象にならないと明記されているわけではない。

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           神経症には自己治癒可能性・疾病利得があり障害年金が労働能力が喪失した場合の生活保障という

                      趣旨から、一定範囲のものを対象傷病から除くことは合目的的である。

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                  ただし世間の精神病に対する偏見を免れるために神経症が使われてきたことから

                 精神病の病態を示しているものについては統合失調症または気分(感情)障害として扱う。

 

[あてはめ]       本件において典型的な症状を示しているわけではないが強迫性障害はうつ病との類縁が疑われ

               請求人はうつ病治療薬であるセロトニン再取り込み阻害薬の服用により症状の改善がみられた。

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            請求人の生来的な知的障害により神経症の本質である自己治癒可能性極めて疑わしい状態にある。

 

[結論]            以上より、請求人の強迫性障害を認定対象傷病から外したことは許されない。

 

2 [問題提起]           裁定請求当時の障害の状態は国年令別表に該当するか。

 

[規範定立]    国年令別表に該当するかは障害認定基準によれば精神の障害の程度はその原因

           ・諸症状・治療及びその症状の経過、具体的な日常生活状況により総合的に認定する。

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            そして日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を受けることを

                            必要とする程度のものを2級とする。

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            日常生活活動等の判定にあたっては身体的機能及び精神的機能 特に知情意面の

                障害も考慮の上社会的な適応性の程度によって判断するよう努め また 

             現に仕事に従事しているものについてはその療養状況を考慮しその仕事の種類・

                内容・従事している期間 就労状況及びそれらによる影響も参考とする。

 

[あてはめ] 1 病状⇒軽度の精神遅滞と脅迫行為が指摘され数時間から1日に及ぶ入浴や手洗いが

             認められ、これを中断すると不安興奮を呈する。

        2 日常生活の判定

             身辺の清潔保持→自発的にまたは概ねできるが援助が必要な程度 ②

             身辺の安全保持及び危機対応→  同上 

             適切な食事摂取→自発的にはできないが援助があればできる ③

             金銭管理と買い物→       同上

             通院と服薬→          同上

             他人との意思伝達及び対人関係→ 同上

        3 日常生活能力の程度⇒(4)援助がなければ日常生活の維持は不可

 

[結論]  このような状態は日常生活が著しい制限を受ける者に相当する程度に至っている。

        したがって国年令別表2級16号に該当する。

 

[解説] 障害基礎年金は都道府県センターで等級判定を行うので同じ障害認定基準を使いながら精神の障害について大きなばらつきがあった。

 そこで、等級判定ガイドラインを定め平成28年8月頃より認定が行われる予定である。

 等級判定ガイドラインでは「等級の目安」を参考としつつ「考慮すべき要素(現在の病状または病態像・療養状況・生活環境・就労状況・その他)」と診断書や提出書類から読み取れる事項を総合的に判断する。

 これは等級判定で統一的な判断をするためには大きな前進ではあるが総合的な判定という点に判断権者の恣意が入りうる余地がある。

 今後をよく見極めたい。