[問題] 1 提出された客観的資料に基づいて20歳到達時における知的障害による障害の状態を認定することはできるか。
2 認定できる場合国年令別表に定める障害等級1級に該当するか。
[論理] 1 障害の状態を認定するにはその時期において直接これにかかる診断を行った医師ないし医療機関が作成した診断書もしくは医師ないし医療機関が診断が行われた当時に作成された診療録等の客観性のあるいわゆる医証の記載に基づいて作成した診断書またはこれらに準ずるものと認めることができるような証明力の高い資料によって行われなければならない。
ただし傷病による障害の程度が不可逆的に増進するまたは時間の経過にかかわらずその程度が変化しないことが確立した医学的知見が明らかな場合には障害の程度を認定すべき時期の診断書などの意匠等が提出されていなくとも、その前後の診断書等により障害の程度を認定すべき時期における障害の状態たる事実が高度の蓋然性をもって証明されたものとして障害の程度を認定することが許される例外的な場合がある。
本件においてライソゾーム病と判明している。
医学的知見によればライソゾーム病は劣性遺伝性の疾病とされライソゾームの分解酵素の欠陥による種種の物質の蓄積が起こり進行性の症状を引き起こし治療法のないものは神経や身体の臓器が次第に悪くなって寝たきりになり幼児期や小児期に死亡することも多いとされている。
本件において請求人の知的能力及び社会的適応能力の障害は不可逆的進行性は明らかであり、その状態は言語的コミュニケーションはなく読み書きによる意思の疎通も困難であり20歳当時すでに障害は完成されたものと解する。
したがって本件障害の状態は 年 月 日現症診断書により認定することができる。
2 精神の障害により障害等級1級の障害基礎年金が支給される障害の程度としては国年令別表10号11号が掲げられている。
障害の程度を認定するためのより具体的な基準として障害認定基準が定められているが給付の公平を期するための尺度としてこれに依拠するのを相当とする。
障害認定基準の精神の障害によると精神の障害の程度はその原因、書証十、治療及びその症状の経過、具体的な日常生活状況により総合的に認定するものとし、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に該当するものと認定するとされ、知的障害による障害で障害等級1級に該当すると認められるものの一部を例示すると知的障害があり日常生活への適応が困難で常時介護を要するものが掲げられている。
本件では知的障害による障害認定日と障害の程度が同じと認められる 年 月 日当時の障害の状態を総合的に検討すると1級に該当していると認められる。
[解説] 知的障害では20歳を障害認定日とし療育手帳があれば初診日証明は不要となる。
しかし認定日請求する場合は認定日の診断書が必要となる。
この場合知的障害では20歳前後3カ月に医師の診療を受けていないことも多くある。
そのため診断書はとれない。
そこで知的障害の性質から障害認定日の障害の状態を推測したのが本件である。
本件におけるライソゾーム病は不可逆的進行性を有する傷病であることが一つの要因となった。
別事例(114)の知的障害では傷病の性質から学習能力が認められ日常生活能力が判定不能として障害の状態を推測できなかった。
この考え方は知的障害に限らず他の傷病に応用できる。