[問題] 両側大腿骨とう壊死の初診日はいつか。
ステロイド投与と当該傷病に相当因果関係があるとしてステロイド投与との原因となった急性胆嚢炎の初診日とすることが相当であるか。
[論理] 障害の程度を認定するための具体的な基準として障害認定基準があるが、給付の公平を期するための尺度としてこれに依拠するのが相当である。
「傷病」とは疾病または負傷及びこれらに起因する疾病を総称したものをいう。
「起因する疾病」とは前の傷病との間に相当因果関係がある疾病をいう。
相当因果関係とはある行為からそのような結果が生じるのが社会通念上相当である場合に因果関係があるとするものである。
また「初診日」とは障害の原因となった傷病につきはじめて医師または歯科医師の診療を受けた日をいう。
そして障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病があるときは最初の傷病の初診日が初診日となる。
ここで突発性大腿骨とう壊死症は原因不明の疾患で、ステロイド薬投与使用に伴って発生することがあるのが事実だが現時点では副作用と呼ぶかどうかは不明である。
そしてステロイド投与による当該傷病の発生が臨床での経験上それが通常であるといえるほど高い確率ではないことからすれば本件の場合、ステロイド投与と当該傷病との発生との間には医学的には一定の因果関係があるものの相当因果関係があるとまではいえない。
したがってステロイド投与の原因となった急性胆嚢炎の初診日を初診日とすることはできない。
[解説] 本件は初診日がいつか問題になった事例である。
初診日はいかなる年金が出るか、いつが障害認定日なのか、保険料納付要件の算定に必要な重要な概念である。
カルテの保存期間との関係で初診日証明が問題になることは多い。
しかし本件は傷病の性格からいつが初診日か問題となっている。