今回は網膜色素変性症で初診日が問題になった事例について少し考えてみようと思います。
ここで初診日とは障害の原因となった傷病により初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことを言う。
本件で問題になっているのは小学生の頃視力低下してめがねを作るために眼科を受診した時を初診日とするように年金事務所に促され、資料もないまま記載した日が初診日となるのかである。
医学的観点から網膜色素変性症の臨床経過を見てみると、当該傷病は網膜の視細胞層網膜色素上皮が変性していく疾患で進行性の夜盲・視野狭窄・視力低下を主症状とする疾病で現在までに発症原因となる遺伝子の一部が報告されつつあり遺伝子異常によるプログラムされた視細胞の死が様々な速度で生じているとする仮説が提唱されており、具体的に遺伝子異常の種類により臨床症状の違い、病態の進行程度に差が生じるとされているが、当該傷病の包括的な発生機序、病態の原因についてはまだ明らかにされておらず、有効な治療手段も確立されていない。その機能予後はその遺伝子異常、表現型に依存して重症度、進行度の違いはあるものの夜盲、視野狭窄、視力低下など主症状の増悪には著しい個体差が認められ出生直後から高度の視力低下を来す患者から、70歳80歳になっても日常生活にほとんど支障を来すことがなく生活できるものもいる。
そうするとなんら資料のない小学生の頃を初診日とするのではなく身体者手帳をとったときに確認できる最も古い日を初診日とするのが相当である
したがって認定された初診日は厚生年金被保険者期間であったことから障害厚生年金が支給されることになった。