今回はうつ病で初診日が問題になった事例について少し考えてみようと思います。
本件でのポイントは請求人の治療は予防的治療にあたり社会的治癒に当たるかになります。
ここで初診日の認定は障害の状態を認定すべき日において直接診療に関与した医師又は医療機関が作成した診断書もしくは医師ないし医療機関が診療が行われた当時に作成した診療録等のいわゆる医証の記載に基づいて作成された診断書又はこれに準ずる証明力の高い資料でなければならない。
そして初診日とは障害の原因となった傷病につき始めて医師又は歯科医師の診療を受けた日を言う。本件では請求人は不眠、不安感などの症状から近医の内科を受診し抗うつ薬を処方されている。経過は良好で抗うつ薬の処方は終了している。ただし再発(?)まで受診は継続しています。
ここで社会的治癒が認められるのは社会保険の運用上、傷病が社会的に治っていない場合でも予防的医療を除きその傷病について医療を行う必要がなくなり相当の期間通常の勤務に服している場合である。
社会的治癒が最も有効なのは初診日国民年金被保険者で、再発時に厚生年金被保険者の場合であろう。
本件では抗うつ薬の終了から再発まで10数年が経過している(裁決例では日付が白抜きのため特定できない)。
また医師への紹介に対する回答書によれば、抗うつ薬の処方を中止した後の受診期間について予防的な意味での抗うつ薬を必要としない状態であり、当該受診は維持的・経過観察的なものであったとしている。
とすると請求人はこの間通常の勤務に服していたのであり、相当程度の給与を得ていたことを考え合わせれば社会的治癒を認め再発時を初診日と認めることが相当である。