今回は大動脈弁狭窄症・上行大動脈瘤・心房細動で発病日が問題になった事例について少し考えてみようと思います。
障害厚生年金は昭和61年4月1日前まで発病日を基準として受給権の有無を判断していました。発病日は特定の困難性から現在初診日に置き換わっています。当時発病日を判断するために診療前に自覚症状が現れたときは医師が傷病の自覚症状と認めた場合に限り発病日とし、それ以外は初診日を発病日としていました。
そして発病日は障害の原因となった傷病の前に相当因果関係のある傷病があるときはその傷病の発病日を発病日とします。
現在では健康診断要治療と出た場合には初診日証明の医証がとれない場合に限り請求人の申立てがある場合に認定できるとされている。
しかし裁決例が出た当時はまだ健康診断用治療が出た場合には初診日とする運用がなされていました。
また、初診日認定的確資料は直接診療に関与した医師または歯科医師が作成したものまたはそれに準ずるような証明力の高い資料でなければなりません。
本件では請求人は先天性の心疾患である大動脈弁二尖弁症を有していました。
その後平成に入って受けた健康診断で心房細動・大動脈蛇行要治療とされています。その後心房細動・高血圧で入院、CT検査で上行大動脈瘤と診断、大動脈弁置換術・上行大動脈置換術等の手術を受けている。
以上のような臨床経過を見ると相当因果関係のある大動脈二尖症の発病日を発病日とするのが妥当と考えられる。
しかしこの発病日を認定するための医証が提出されておらず採用できない。
それ故に健康診断日が発病日として認定された。