今回は統合失調症で不利益変更禁止の原則が類推適用された事例について少し考えてみようと思います。
本件では主位的に障害認定日請求を、予備的に事後重症請求をし障害認定日2級が認定されています。
その上で初診日を争っていることから訴求額を増やすことを目的としたことと考えられます。
そして請求通り初診日は認定されたことから処分は取り消されるのが原則ということになります。
しかし初診日が変更された場合障害認定日も変わることから認定日請求した場合障害の状態を判断すべき現症日が異なることになる。
本件では障害の状態を判断すべき現症日の診断書が提出されていないことから処分を取り消した場合障害認定日請求は障害の状態を判断できないことになり請求は却下されることになる。そして予備的に併合されている事後重症請求が判断されることとなる。
請求日現在の障害の状態が2級認定されたとしても原処分で認定された初診日を基礎にした障害認定日からは1年以上の期間がある。
とするとこの期間に支給された年金額をすべて失うこととなり請求人に不利な結果を招くことになる。
そこで不利益変更禁止の原則を定める民事訴訟法304条を類推適用して原処分を取り消すことなく請求を棄却することとした。