不服申立て審査請求の対象について少し考えてみたい。
法は審査請求の対象を「行政庁の処分」(行政不服審査法2条)「行政庁の不作為」(法3条)と定める。
ここで「行政庁の不作為」法令に基づく申請に対してなんらの処分をしないことをいう。これは明確でわかりやすい。
では「行政庁の処分」とは何か。
判例は行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく公権力の主体たる国または地方公共団体が行う行為のうちその行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する事が法律上認められているものと解している。
この定義によれば①公権力性 ②国民の権利義務に対する直接具体的な法律規律という観点から処分性が判断される。
そして公権力性とは法が認めた優越的地位に基づき行政庁が法の執行としてする権力的な意思活動のことをいう。
ここで障害年金の裁定請求を考えてみれば機構が障害年金支給の判断権を有しそれに基づき障害年金の支給がなされることから①公権力性を有する。
また障害年金は支給要件を満たすことにより支給が認められる国民の権利であることから機構の判断である請求却下・棄却決定は②国民の権利義務に対する直接的具体的な法律規律といえる。
したがって裁定請求に対する請求却下・認容・棄却決定は行政庁の処分であるといえる。
では申請に対する拒否決定は行政庁の処分といえるか。
まず行政庁は申請が到達した場合遅滞なく審査を開始しなければならない。また申請が形式的要件を満たしていない場合申請者に対して補正を求めるか、申請を拒否するかの対応を取らなければならない(行政手続法7条)。
これは行政庁が審査応答を義務付けられることを意味し、申請を受理しないことや返戻が違法であることを意味する。
それゆえに申請に対する拒否決定は行政庁の処分ということができる。