障害年金の申請にカルテ(診療録)は重要な役割を果たす。別項でも論じているとうり行政手続きは専門的技術的機関ガン簡易迅速に国民の権利を保護するという観点から専門家である医師の医証が重視される。医証はカルテに基づく必要がある。それゆえに何らかの理由により診断書の作成依頼を拒否された場合にカルテ開示請求権が重要になってきます。
ではカルテ開示請求権は何を根拠に認められるのでしょうか。
ここで憲法は抽象的な概念を規定しているだけで通常個別具体的な事案には直接適用することはできない。要件効果を定めた法律が必要となるのである。また、法律に憲法の趣旨を取り込んで解釈する事もある。
これは憲法が国の最高法規であって憲法に反する法律は効力を有しない(98条1項)とすることからも明らかである。
カルテ開示請求権はプライバシー権に基づいています。プライバシー権は「宴のあと」事件一審判決で私生活をみだりに公開されない権利として認められたのが始まりです。その後情報化社会の進展の中で自己の情報をコントロールする権利ととらえなをされた。しかし憲法にプライバシー権は規定されていません。では憲法改正(96条)が必要なのでしょうか。
実は憲法13条後段幸福追求県は新しい人権の根拠規定と考えられています。そして新しい人権として認められるかは特定の行為が個人の人格的生存に必要不可欠かどうか、その行為を社会が伝統的に個人の自律的決定にゆだねられたものと考えられているか、その行為は多数の国民がおこなおうと思えば行うことができるのか、行っても他人の権利を侵害する恐れがないかなどを考慮して決められます。ただし憲法の趣旨を実現するため法律を制定する権限を有するのは国会であり裁判所が新しい人権を認めることは非常に抑制的に動いています。
ちなみに現在環境権などを憲法に規定するために憲法改正するべきだなどと言われますが憲法13条後段から認めるべきではないかという議論が続いています。ただ環境権自体を法律で制定することは憲法の趣旨に反する事ではないので立法化すればよいと思います。また憲法に規定する趣旨は国に憲法の趣旨を実現する事を義務付けられることだけなのです。私からすればあまり意味がないことだと思います。
当初はプライバシー権は既存の法律に憲法の趣旨を取り込んで適用されていました。典型例が民法の不法行為責任(民法719条)です。
しかしそれでは個別具体的な問題が起こった時だけに適用されるだけで問題が起こる前に国民の側から能動的な権利保護をすることは困難でした。
そこで個人情報保護法が制定されたのです。個人情報保護法では個人情報を定義し、、国及び地方公共団体の責務、個人情報取扱事業者の責務等をさだめ、個人情報の開示・訂正・利用停止を定めた。
カルテ開示請求権は個人情報保護法の開示請求を根拠とするがその根本は憲法13条後段の幸福追求県を根拠とする。
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